士師記6:14
すると主は彼の方を向いて言われた。「行け、あなたのその力で、あなたはイスラエルをミディアン人の手から救うのだ。わたしがあなたを遣わすのではないか。」
何という勇者でしょう!
そこには、老夫妻がひっそりと暮らしていました。
当時のロシアには、秘密警察があちこちにいました。コーリー・テン・ブームは、尾行されないように細心の注意を払いながら、その老夫妻の住まいを訪ねたのです。
部屋の中では、長椅子に横になった婦人が、彼女の誠実な夫とともに、コーリーを出迎えてくれました。
彼女は、恐ろしく複雑な硬化症のために身体を動かすことができませんでした。筋肉が衰えていて、眼球だけを上へ回して微笑むだけだったとコーリーは言っています。
彼女が、唯一、自分の意志で動かせるのは、右手の人差し指だけでした。
コーリーは、彼女の指を「恵まれた一本の指」と呼んでいます。
そうして彼女は、あの恵まれた一本の指でタイプを打ち始めるのである。
日もすがら夜が更けるまで、彼女は打ち続ける。
彼女は、キリスト教文書をロシア語に、ラトヴィア語に、そして彼女の国のことばに翻訳した。
主のための放浪者 コーリー・テン・ブーム著 いのちのことば社
彼女の夫は、毎朝、彼女を長椅子に固定します。そして、人差し指でタイプを打てるよう整えるのです。
コーリーの著書も、ビリー・グラハムの本も、そして、聖書の一部も、彼女は「人差し指」だけで打ったのです。
ポツン…ポツン…ポツン…
それは、遅々として進まないように見えます。しかし、彼女は根気強く、黙々と、その作業を続けていたのです。
「ああ、主よ、なぜ彼女を癒してくださらないのですか」とコーリーは思ったそうです。
しかし、彼女の夫は言いました。
この町のすべてのキリスト者は、秘密警察に監視されています。けれども彼女は、長い間の病気のために、誰からも監視されずにいるのです。~中略~
彼女は、この町でただ一人、警察に探られることなく一人静かにタイプを打つことができるのです。
主のための放浪者 コーリー・テン・ブーム著 いのちのことば社
コーリー・テン・ブームは、この老夫妻のことを「何という勇者であろうか!」と言っています。
ギデオンは、主の使いが現れて「勇士よ、主があなたとともにおられる」と言ったとき、自分たちの置かれた境遇に対して「不平」を申し立てました。
「主が、ともにおられるなら、なぜ、このようなことが起きたのか」と言ったのです。
私たちは、どうでしょう?
主はあなたにも言われます。
そのように言われたなら、あなたの境遇を嘆いてはなりません。
「自分には賜物などない」と言ってはなりません。
「もっと、あの人のように恵まれていれば」とうらやんではなりません。
「恵まれた一本の指」だけで、何と大きな幸いがもたらされたでしょう。
あの老夫妻の置かれた環境は、決して「快適で満ち足りた」ものではありませんでした。
覚えてください。
主は「効率の良いこと」を求めてはおられません。「上手にできること」が必要なのではありません。
主が求めておられるのは、ご自身の呼びかけに応じて立ち上がる「勇士」です。
主は、力強い完璧な勇士を求めてはおられません。
主は、言われます。
「行け。あなたのその力で」と。
老婦人の「恵まれた一本の指」が多くの幸いを生み出したように、あなたの「その力」を主が用いてくださいますように。
必要なのは「応じること」だけです。
主よ、あなたの招きに応じます
主よ、私は立ち上がります
あなたの遣わされるところに行きます